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日本同盟基督教団 教団事務所 

強い意志とやさしい心をもって 社会局長 山村諭

強い意志とやさしい心をもって
社会局長 山村諭(茅ヶ崎同盟教会牧師)

「ですから、蛇のように賢く、鳩のように素直でありなさい」(マタイ10章16節)

主イエスはマタイ10章の全体で「弟子の心得」を語りました。狼の中に送り出される羊のような弟子たちが心得ておくべきことは「蛇のように賢く、鳩のように素直」であることでした。公民権運動を指導した牧師マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、その説教の中で、この主イエスの言葉を「強い意志とやさしい心」と言い換えました(『汝の敵を愛せよ』1965、新教出版社)。
キング牧師によれば、蛇のように賢いとは、「物事を批判的に判断し、真実のものを偽りのものから、事実を虚構から識別する強固な意志」であると言います。私たちの意志は「一面の真理や偏見、誤った事実などの大軍によって絶えず襲撃されている」のです。
今、まさに一面の情報やデマに踊らされ,不安が蔓延している私たちの社会です。いつ収束するのか分からない。誰が感染しているのかも見分けられない。生活の基盤が脅かされ、差別や偏見が露呈され、格差と分断は至る所で深まりつつあります。この緊急事態に紛れて法の解釈を変え,基本的人権を制限する法改正まで検討されています。「人類が非常に必要としていることの一つは、誤った宣伝の泥沼から抜け出すことである」とキング牧師は言いました。不安に支配されず、混乱に踊らされず、事実を虚構から識別し、不正や欺瞞(まん)を見逃さないことも、私たちに求められる強固な意志なのだと思います。
しかし、キング牧師は言います。「われわれは、強い意志の鍛錬だけでとどまってはならない。福音はやさしい心をも要求している。心のやさしさを伴わない意志の強さは、孤立して冷たく、その人の生活を絶え間ない冬に閉じ込め」る。「鳩のような性質を伴わないで、蛇のような性質だけを持つことは、情熱に乏しく、さもしくて、利己的だ。逆に、蛇のような性質なしに、鳩のような性質だけでは、感傷的で気力に乏しく、目当てのないものになってしまう。われわれは、非常にはっきりした正反対の性質を結び合わせなければならないのである」と。
キング牧師はこれらの言葉を公民権運動の渦中にある人々に語りかけ、「非暴力的な抵抗の道」を説きました。意志の強さと心のやさしさを結び合わせ、意志の弱さから来る自己満足や怠惰、心の無情さからくる暴力を避け、非暴力的な抵抗によって、社会の不公正な制度に反対し、同時にその制度を支持する人たちを愛することを訴えたのです。
「やさしい心」なしに「強い意志」だけで物事に向き合うならば、人を真に愛することはできないのです。「功利主義に没頭し、自分にとってどの程度有益かという面から」しか人を評価することができず、「友情の美しさ」を経験することも、「他の人と喜びや悲しみを分かち合うこと」もできません。敵と思える相手に対して、強い意志をもって洞察を鋭くするだけでなく、やさしい心をもって向き合うことが求められています。キリストの弟子たちは、非常に高度な生き方を求められています。
福音は強い意志と共にやさしい心を要求しています。私たちの信じる神は「厳格さと温和さという両方の性質」を持って世と向き合いました。神は「世界を超越できるほど意志強固であり、世界の中に住むことができるほど心やさしい方」です。神は私たちを「苦悩や葛藤(かっとう)の中に放置」することはありません。私たちの苦しみを知ってくださり、私たちの醜い現実の中に来てくださり、私たちのために共に苦しんでくださり、私たちにご自身を与えて愛を注いでくださいました。強い意志とやさしい心をもって十字架を担われた主イエスを見上げましょう。自分の十字架を負って従うよう召された私たち教会も、強い意志とやさしい心をもって、この世界に御国を宣べ伝える者でありたいと願います。

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