○教会と宗教法人
「教会が宗教法人になる」と聞いて、何か違和感を持つ方がおられるでしょうか。 法人に 「なる」と聞くと、私は衣替えをするような、別の何かに変化するような印象を持ちます。
それでは、法人の有無によって教会の姿形が変わるのでしょうか。宗教法人を設立した教会は、それまでの教会の衣を脱いで、新たに宗教法人の衣を着ることになるのでしょうか。
宗教法人法第4条では「宗教団体は、この法律により、法人となることができる」と規定されていますので、教会が宗教法人を設立し、法人に「なる」との表現が間違っているのではありません。
私は教会と宗教法人それぞれの目的を考えると、宗教法人に「なる」のではなく、 「もつ」と表現することが、より適当ではないかと思っています。
たった2文字の違いで、気にする必要のない、ささいなことかもしれません。しかし、ここには重要なポイントがあります。
○教会の目的
教憲前文では、 「本教団の存立の目的は「聖書信仰、宣教協力、合議制」における一致のもと、聖霊の力により、キリストの宣教命令に応えて、神の栄光を現すことにある」とされています。
また教団の教会規則サンプル第3条では、 「本教会は・・・礼拝を守り、みことばを説教し、聖礼典を執行し、広くキリストの福音を宣べ伝え、人々を救いの恵みに導き、教育し、神の栄光を現すことを目的とする」とされています。
言うまでもなく、教会の目的はキリストの宣教命令にもとづく福音宣教であり、神の栄光を現すことです。この目的を達成するために必要なあらゆる事を、教会は一致して行います。
○宗教法人の目的
宗教法人法第1条では「この法律は、宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務および運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とする」とされています。
この条文はあくまで「この法律」の目的を規定するものですが、ここには宗教法人の目的が明らかにされています。
宗教法人の目的は、礼拝施設等財産を所有し、それを維持運用することであり、宗教団体の目的を達成するための業務および運営に資することにあります。
つまり、宗教法人は教会の目的である福音宣教の働きに仕え、神の栄光を現すことを目的としていると言えるのです。
ですから、 「教会=宗教法人」ではなく、教会が宗教法人になる(変わる)のではないことが分かります。宗教法人は教会における財産の管理・運営に仕える一部門に過ぎないのです。
○宗教法人をもつ目的
教会の目的を達成するためには、必ずしも法人をもつ必要はありません。しかし、礼拝堂や牧師館を教会として所有したり、様々な法律行為をしたりするためには、法人をもつ必要があり、それが宣教のために役立ちます。
法律上の能力を得るということは、世俗の法の下に服することを意味しますが、福音宣教は世俗の法に縛られるものではありません。施設や財産の所有という点においてのみ、法人は世俗の法の下に服するのです。
宗教法人をもつ目的は、財産の所有・管理等における法律上の能力を取得することで、福音宣教の働きに役立つよう最大限活用し仕え、神の栄光を現すことにあるのです。
すでに法人をもっている教会も、持っていない教会も、福音宣教に資する事務管理・運営について考え、整え続けたいと願わされています。