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認知症と教会 Vol.6 さあ、教会へ行こう

認知症と教会 Vol.6

さあ、教会へ行こう

東京基督教大学 教授 井上貴詞(土浦めぐみ教会教会員)

認知症の兆候が明瞭でもすぐに教会に行くことを差し止めるのは逆効果であり、教会側の環境づくりが大事であると前回お伝えしました。今回は、初期の認知症当人を家族が教会に連れていく時の留意点、ガイド(案内人役)のポイントを整理します。それぞれの行程でのつまずき(生活上の障害)、適切・不適切な対応を挙げてみます。
抑うつ状態になる等を除けば、クリスチャンは認知症になっても教会の礼拝出席を渇望します。しかし、当人は今日が何曜日であるのか、どうやっていくのかが思いつきません(つまずき)。家族が前日声かけをしておいても本人はすっかり忘れています。「今日は日曜日ですね。礼拝ですね」と気づきを促します(ガイド)。「日曜日であるのもわからなくなったの?」「昨日言ったじゃないの。しっかりして!」等と叱咤するのは不適切な対応になります。
次に時間管理です。いつもならお化粧の時間もあるから早く起きる当人。しかし、準備に要する時間から逆算して予定を立てることは困難になっています(つまずき)。「私も一緒に起きるから目覚ましをかけておきましょう」と伴走する姿勢を示すことが良きガイドです。「早起きしないとまた遅れるわよ」と発破をかけるだけで具体的な助けを示さないのは不適切な対応です。
持ち物も確認しましょう。お財布、ハンカチ、聖書、讃美歌、筆記用具等あるのですが、当人は何がどこにあるのかもわかりません(つまずき)。ストレートに指摘する(不適切な対応)よりも、「母の日に買ってあげたハンカチ持っている?」と過去のエピソードに結びつけて記憶を喚起するのが良いでしょう(ガイド)。
服装はどうでしょう。寒くなった季節なのに当人は薄着。外出や季節に適した服装が思い浮かばないのです(つまづき)。もともとおしゃれ好きな方であれば「お母さん、このカーディガン似合いますね」とほめつつおしゃれ心をくすぐるような声かけが良いでしょう(ガイド)。「冬なのにどうしてそんな薄着で行くの?」「また同じ服?」等の咎(とが)める発言は禁句です。
バスで教会まで行こうとしますが、出発時間、バス停までの時間がわからずに困惑します(つまずき)。「バスの時間は何時だったかしら」とゆっくりと一緒に考え確認するようにします(ガイド)。「いつも9時半と決まっているでしょ」とせかすのは非難と受け止められます。
すべて当然の対応に見えますが、スピーディーでインスタントな結果を求める現代人には、慣れるまで忍耐を要し、愛する練習が必要です。当人が認知症初期の段階は、家族も「否定」「困惑」「混乱」「怒りやいらだち」の心理過程の段階にあります。不適切な対応が連鎖すると当人はパニックを起こして、家族も傷つき、疲弊し、外出をあきらめてしまいます。そして、当人も家族も自分を責めてしまいます。認知症になった妻を介護する夫は、しばしば変化する妻を受け入れることができず、声を荒げて手も上げてしまいやすいという調査報告もあります。クリスチャンホームだから安心とは限りません。その苦労へのねぎらい、傾聴、理解の共有、情報提供などサポートは必要です。
次回は、認知症ケアの具体的方法について分かち合います。

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