昨年10月11日、秋のセミナー「クリスチャンとして公共の場でどう生きるのか」というテーマで第1回「カイパーの領域主権論から考える」をオンライン開催しました。前回の講演に続き、ハレファ・スルヤ師(茨木聖書教会副牧師)から、オランダの首相であり神学者でもあったアブラハム・カイパーが示した4つの重要なポイント(有機的教会・共通恩恵・領域主権・宗教的反定立)のうち、今回は領域主権論について学びの時を持ちました。
カイパーが提唱する領域主権論とは、私たちの生活分野である家庭や学校、さらに広げて政府など含むすべての領域を、神が目的をもって創造し、各々の領域はその目的を達成するために神から与えられた主権を、他の領域に支配されずに用いていくという思想です。この領域主権論の視点をもって見れば、政府もまた、最終主権者である神から与えられた主権を適切に果たす責任があり、他の領域全体を上から支配することではなく、むしろ自立するように尊重し、維持する務めを担うものです。カイパーは、この領域主権論をもってキリスト者が公共の場(芸術・科学・経済・政治など)にて、主権を自由に発展させることができるように働きかけることを推奨します。
これらを踏まえて、スルヤ師から日本でキリスト者がこの領域主権論をどのように適用させるのかという提案が語られました。日本の公共の場でキリスト者がアイデンティティをもって生きることの難しさは、国際社会や政治だけでなく、より身近な学校、夫婦や子育て、社会のハラスメントなど、私たちの生活領域全般にわたって領域主権が侵害されているからだと指摘します。なので、私たちキリスト者は、私たちが生きる公共の場をより豊かにするために、キリスト者同士でグループをつくり、各々の領域での存在目的と限度を明確にしながら理解を深め、神の栄光を現わす働きかけをするようにとの招きをもって、スリヤ師は講演を閉じられました。
今回の講演に参加された方々から「日々の生活を通して社会的領域の理解を深め、どのように適用していくのか、自分の身丈に合わせることができた」という感想がありました。分断が深まり人々の間に不安と緊張が増しつつある現代社会にあって、私たちが、カイパーの領域主権論という1つのまなざしをもって理解を深め、神が造られた世界に関わることの積極的意義を見い出すことができる大変有意義な学びとなりました。