IT委員会委員
さて、前回の続きとして、具体的な教会音響改善のための提案をさせていただければと思います。そのためにはまず、音響システム全体像を描きつつ、改善策を考えましょう。
音響システム(一般に「PA」と言います)は大きく3つのパートに分かれます。①マイク、②ミキサー、③スピーカーです。それぞれの役割と注意点、製品選びのコツを考えます。
①マイクは音を拾い上げる役割を担う機材です。声や楽器によって出された音の空気振動を微弱な電気信号に変え、ケーブルか電波を通してミキサーに届けます。マイクは大きく2種類あり、電源がいらない「ダイナミックマイク」と電源が必要な「コンデンサーマイク」です。前者の特徴は安価で取り扱いが容易であることです。マイクから近い音をよく拾うので、ボーカルや楽器用に最適です。後者は一般的により高価で、衝撃に弱く、電源(48Vファンタム電源)を必要としますが、ささやくような息づかいも拾い上げる繊細で透き通った音が特徴です。礼拝中のほとんどの場面ではダイナミックマイクで十分ですが、講壇上はコンデンサーマイクを使用すると説教者の声が明瞭で聞きやすくなります。マイク全般に共通する上手な使用方法は、なるべく口元に近づけることです。使用者は恥ずかしがらずになるべくマイクに近づいて、大きな声で語りましょう。マイクの位置は常にスピーカーに対して横向きか後ろ向きになるようにセッティングすれば、ハウリングを抑えられます。
②ミキサーは、別名をコンソールと言います。いろんな音源を一箇所に集め、それぞれの音を整え、混ぜ合わせて1つの音としてスピーカーに渡します。こちらも大きく2種類あり、アナログとデジタルがあります。古いアナログミキサーはノイズが出やすいため、もし買い替えるならデジタルがおすすめです。デジタルミキサーは音を整えるためのEQやコンプレッサーなどの機能が組み込まれているものがあり、総合コスト面と音質面で優れています。ミキサーの扱いで大事なのは、操作する人の訓練です。基本的な操作ができる2、3人の奉仕者は備えておきたいですね。上手に使うポイントは、各チャンネルのゲイン調整をハウリングしないギリギリまで上げて、あとはフェーダー(ボリュームノブ)を絞って使うことです。フェーダーは0dBより上には上げないようにします。音が一番よく聞こえる礼拝堂の右か左の後ろに設置するのがベストです。
③スピーカーは、最終的に音を響かせる大事な機材です。大きく2つのタイプがあり、電源付きの「パワードスピーカー」とパワーアンプとセットで使用する「パッシブスピーカー」です。基本的には左右2本で1 セットです。スピーカー設置時のポイントは、左右の距離を最大限確保しつつ指向角度内に聴衆が収まるようにし、なるべく高いところから見下ろすように配置することです。個人的なおすすめは「ラインアレイスピーカー」です。設置性がよく、音圧が分散されるため、手前と奥の席での聞こえ方の差が小さいのが特徴です(図1)。
いかがだったでしょうか。基本的なことしかカバーできていませんが、基本さえしっかり押さえれば、教会音響は決して難しいものではありません。ぜひ、今以上に素晴らしい教会音響を作り上げてみてください!
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