第5回は「無視」を取り上げます。
「話しかけてもいつも無視される」……たまたま気づかなかったというのではなく、常に無視されるというのはハラスメントに当たります。特に組織的に特定の個人を無視することは悪質であると言えます。
「無視」はハラスメントに当たりますが、次のような場合はその判断を慎重にすべきです。
①「無視」している側がうつ状態の場合。人は多忙、人間関係トラブルなどのストレスや喪失体験などでうつ状態になることがあります(5月号の記事)。
「無視」している側が既にハラスメントの被害を受けている可能性もあります。心の健康状態が不調なために「無視」せざるを得ないことがあります。こうした場合の「無視」についてはハラスメントの判断を一時保留します。そして心の健康状態を回復するための配慮が必要です。
②当事者間が係争中の場合。
事態を悪化させないために「無視」せざるを得ない場合があります。このように「無視」にも一定の合理性が認められる場合には、ハラスメントの判断を保留します。なお係争中の場合は、代理人や仲介人を立てることによって「無視」の状態を解消することが望ましいでしょう。
③ストーカー対策として「無視」している場合。ストーカーから身を守るために相手を無視することは、問題行動に見合った行為ですので、この場合の「無視」はハラスメントには当たりません(なおストーカーに対していきなり無視すると相手の行為をエスカレートさせる危険性もありますので、「もうかかわらないでください。今後もかかわるようなら無視します」等と相手に警告を与えてからする方がより安全であると言えます)。
「無視」という行為だけを取り上げてハラスメントか否かを判断せず、その行為の状況や背景を考慮して判断すべきです。
互いの人格が尊重され、安心して集える教会でありたいものです。