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日本同盟基督教団 教団事務所 

宣教としての事務管理を考える ⑥

宣教としての事務管理を考える ⑥
キャッシュレス献金
河野優(法人事務主事)

新型コロナウイルスの感染拡大により教会に集まることができず、インターネットによる中継や動画の配信を利用している例が多くあります。毎週の礼拝で献げられている「献金」についても、どのように献げるか、諸教会において苦慮されていることでしょう。
教会に持参する、銀行振込を利用して送金する等の方法が考えられますが、近年のキャッシュレス決済普及に伴い、「キャッシュレス献金」の可能性を検討されている教会もあるのではないでしょうか。

○京都仏教会による声明文
2019年6月28日、一般財団法人京都仏教会は「布施の原点に還る」と題する声明文を発表し、課題を提示して傘下寺院に対して布施など宗教活動におけるキャッシュレス化を受け入れないよう対応を求めました。
この声明文を受け、京都仏教会の研究機関である宗教と社会研究実践センターが研究をまとめ、今年の6月に論文集「キャッシュレス社会と宗教活動」として発行しました。

論文集で提示されているいくつかの課題を抜粋して紹介します。
・布施は単なる財政的貢献というだけではなく、宗教的意義を有するものであるが、身体的感覚を抜きにしたキャッシュレスで信者の信仰心を涵養しうるのか…十分な検証が必要である。
・宗教行為のキャッシュレス決済は、非課税の宗教的収入であるが、業者にとっては利益を得る商品であり、課税対象となる。ここで宗教行為と商行為が一体不可分となり、宗教課税を勢いづかせる面があることも考えなければならない。
・宗教行為のキャッシュレス決済により、宗教者の情報が業者に集積され、漏洩が心配される。…「信教の自由」が犯される危険も想定され、当面、アナログ世界にとどまることも宗教界の選択肢の一つであろう。(以上、前掲書89頁より抜粋)

○キャッシュレス献金を考える
献金は神への感謝と献身の表れであり、宗教的意義を有する行為であることは疑いありません。聖餐式においてはパンと葡萄酒を味わうことで、救いの恵みと約束を確信しますが、献金における身体的感覚も大切な要素であると考えます。
献金の本質は、献げる者の心にありますので、方法がキャッシュレスだからといって直ちに否定されるものではありません。しかしながら、キャッシュレスによる「手軽さ」が献金の本質に対してどのような影響を与えるのか、十分に検証される必要があります。
課税対象になるかどうかについては異なる意見もありますが、宗教法人に対する各種の非課税措置等に対して世間一般の目は厳しく注がれている面もあると思いますので、慎重な検討が求められます。
インターネットの検索履歴や物品の購入履歴など、生活習慣や思想に係わる個人情報等が日常的に収集されている現代にあって、献金という各人の信仰に基づく宗教行為が、教会外にデータとして蓄積されてしまうことについては、悪用の懸念など憂慮すべきことと考えます。
新しい技術が福音宣教に益をもたらしていることも多くあります。キャッシュレス献金ができれば、より便利で献金しやすい環境となり、教会会計は助かるかも知れません。
しかし、教会が便利さや手軽さばかりに目を奪われているとすれば、それは警戒すべきことです。福音宣教の伸展のために、キリストの教会をふさわしく建て上げるために益となるのかどうかを、積極的に議論しつつ慎重に見極めることが肝要です。

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