5月22日に第8回首都圏宣教セミナーがオンラインで開催され、「牧師と教会員のための「こんな時どうする?」〜知って備える教会実務〜」をテーマに山崎龍一氏(お茶の水クリスチャンセンター常務理事)より講演を聴きました。
すでにクリスチャン新聞などのメディアで講演について紹介されていますが、さらに多くの方々にふれていただきたいと考え、ここに筆者のメモを基に講演の一部を紹介します。
鍵となる言葉は「教会的に考えること」と「せめぎ合いの地で生きること」です。
これは、聖書とは異なる原理で機能しているこの世の現実を見つめつつ、現在起こっている出来事や課題をキリスト教世界観に基づいて見つめることと、その際に生じる信仰によって整えられた言葉と思考によって解決にあたることを意味します。
例えば、宗教法人法の考え方とキリスト教世界観はかみ合わない部分があります。教会では両者を単純にかみ合うようにするのではなく、着地点をどうするかに視点を定めて考え、対応していくことが必然的に求められます。ここで教会的思考が問われ、かみ合わない現実とのせめぎ合いが生じるのです。
教会実務の分野は「この世の知識」を扱う分野であり、苦手意識を持つ牧師が多いと思われますが、実際は教会の福音理解や信仰理解が問われる、極めて本質的な事柄なのです。
福音を心の中に押し込めず、生じた問題を「わからない」といって遠ざけず、決断を専門家に丸投げせず、自分たちで考えて相談し、決断することが大切です。
私たちは教会的思考を身につけることが重要です。教会において、牧師は事務管理に対する教会的思考を聖書から解き明かし、信徒は事務管理・実務を教会的思考で行い、ともに教会を建て上げていくのです。教会事務実務はこの2者の信頼関係に基づく奉仕が問われるもので、牧師は説教、事務は信徒という単純な分担構造は作らないように注意が必要です。
教会実務は会計などの財産管理、牧師謝儀などのいわゆる待遇、教会規則とそれに則った活動・管理、宗教法人の管理運営など多岐にわたります。いずれも、聖書に基づき教会的に見、考え、取り組むことが必要です。
教会実務においては、専門家が即答できないような内容も多く、個々に考えつつ、交わりの中で解決を見出していくことも多い現状があります。
諸教会間の協力として、教会的思考の継続的な研鑽をできないかと考えています。研鑽を積んだ上で専門家への相談、教会での検討、教会の決断という道筋を整えたいものです。
(筆者による講演メモは以上)
今回の講演は、講師である山崎氏の著書「教会実務を神学する」(教文館、1980円)の出版記念を兼ねて行われました。
この本は「教会実務においてどのような理解をもつことが教会の成熟かつ堅固な歩みにつながり、異なる教えを見極める識別力を生み出していくかという教会実務の神学への試みです」(同書8頁より抜粋)
本の帯にある通り、教会的な思考の力が身につく内容の本で、諸教会の皆さんに、また役員会での学びなどにもお勧めしたい1冊です。
教会的思考を整え、キリストの体なる教会を共に建て上げるために用いられることを願っています。