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日本同盟基督教団 教団事務所 

宣教としての事務管理を考える⑧ 記念誌

宣教としての事務管理を考える⑧
記念誌
河野優(法人事務主事)

こんな献堂記念誌があったら面白いかもしれない…
これは先日読んだ本の読後感です。この本は著者である大学教授が、蔵書を収める書庫を建てる過程の記録です。
ものづくりに興味があり、建築や本というキーワードに心惹かれ読み始めたこの本のタイトルはずばり「書庫を建てる」というものでしたが、本文の4分の1は著者の来歴など著者自身の家族や本人の人生についての記録です。
著者自身の家の来歴などのファミリーヒストリーには興味がなかったので、いつになったら書庫の話になるのか、そんな焦りを胸に抱きつつも一気に読み通しました。
読み終えたとき、つまり書庫が建てられたときにようやく、この著者自身に関する記録部分の重要性に、これがなければこの本も書庫も成立しないことに気がつきました。建築に携わった建築士は、その建物には著者自身の個人史が、一族の歴史が詰まっていると述べていることからも分かります。

この本を読みながら、私はある教会の「献堂記念誌」を思い出しました。私は事務所専任の教務教師ですので、平日は教団事務所での働きに仕え、日曜日には諸教会からの招きに応じて礼拝説教奉仕をさせていただいています。
初めて伺う教会では、できるだけ事前に教会の歩みや歴史を見るようにしています。幸い、教団事務所には諸教会から寄贈された記念誌が保管されていますので、それを読むなどするようにしています。
ちょうど、その時に伺う教会の「献堂記念誌」が保管されていたので、それを読みつつ準備しました。教会による開拓によって始まったその歩みから語り始め、献堂に至るまでの伝道の軌跡と、会堂建築に際して確認された教会のビジョンなどが簡潔にまとめられ、それらを体現するような教会堂がついに建てられたことが、主への感謝と賛美にあふれて記録されている、すばらしい記念誌でした。

いよいよ説教奉仕当日、緊張と期待を胸に伺った教会の姿は、果たしてどうだったでしょうか。
順境だけでなく逆境もあり、様々な困難を教会が乗り越え、その地に根を下ろして福音を証しし続ける決意があふれていたその記録は、私の目の前に、生き生きと実現されていたのです。非常な感動を覚え、主を賛美したことを今でも鮮明に覚えています。
その教会に直接かかわることのなかった私が、その教会を知るために読んだ献堂記念誌は、その教会の姿を実に忠実に、生き生きと現すものであったのです。こういう記念誌が作られるならば、その教会にとってはもちろんのこと、以後のすべての人々にとって、それは計り知れない恵みになると確信させられた出来事でした。

歩みの節目につづる「記念誌」といっても、その内容は様々です。そこに集う人々の証言を記録する文集や証し集、出来事や文書記録など中心とした記録集、様々な記録に対する一定の評価などを記した論評集などがあげられるでしょうか。
先の体験を通して強く感じることは、教会が1つの記録をまとめ上げるとき、その記録の性格や種類にかかわらず、教会の歩みに現わされてきたみわざを、読み手の誰もが体験することができるか、その恵みを味わうことができるかどうかが大切なことではないかということです。
そうすると、教会が記念誌を作成するのは、単に成果を記録したり、過去の出来事を懐かしんだりするためではなく、教会の歩みを後の歩みに「生かす」ためであると言えるのではないでしょうか。
後の時代にあっても、当時を振り返り、主の御前に悔い改め、主に期待することのできる記録。こういうものを残していくことができれば、どんなにすばらしいことでしょうか。
諸教会において、後々まで主のみわざを生き生きと証しし続ける記念誌が今後も作成されることを大いに期待します。

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