前号(2021年10月)に続き基礎知識編です。あと1回で完結です。
①被害想定とハザードマップ
被害想定やハザードマップは一定の前提条件に基づいていることから限界があり、防災行政に過剰に依存することなく、災害は人知を超えることがあると意識して全国民が災害に備えるべきである。
②避難
●避難措置 避難勧告ガイドラインに基づいて市町村が発令する避難指示と避難勧告は従わなくても罰則はなく、強制力がないので無視する人がいる。外れた場合でも「避難勧告が外れて良かった」とポジティブに捉えよう。
●自主避難 近年の風水害は、
従来の常識を覆すようになって防災情報が適切に出されないケースがあることから、避難勧告を待たずに自主避難する。また指定された避難所に限定せず状況に応じて住民自ら最終判断する必要がある。
1 減災、危機管理手法(予防・復興)
①都市防災
人口集中、新旧の混在、地盤沈下、地下空間進出、エネルギー大量集積、住民移動と関係希薄化という災害時にはマイナス要因となることが幾重にも重なっていることを知ろう。そこで災害に強いまちづくりを推進する。
●既存不適格建物 倒壊ばかりか火災の原因となる。耐震化を推進する以外ない。
●交通渋滞 阪神淡路大震災では平均時速1km以下になった。消防車や救急車も妨げられた。安否確認、水・食料調達に「むやみに移動しない」ように自粛する。道路利用は時間経過で変わる目的別に優先順位が付けられる。
●地下空間 地下鉄と駅ナカの危険性が知られていない。規制が開発に追い付かず後追いになっている。内水氾濫が地下空間に流入すると地下鉄、地下街からの脱出は困難を極める。避難誘導員、駅員も少なく、早めのリスク情報により避難を早めることが重要。
●帰宅困難者 首都直下型地震では首都圏(1都3県)で650万人(正午発生想定)の帰宅困難者が出ると推計している。このうち仕事・学校の570万人は組織でコントロールできるが、買い物80万人が行き場を失う。
②危機管理
危機の種類自然災害、大事故、事件、感染症、テロ・戦争
担い手行政では市町村、地域では住民が担い手である。危機の時にこそ行政の力が試され、市民が情報交換や助け合いを行なっているかどうかが問われる。この時、市民と行政の間に意識のギャップが生じないように、「必要な情報の変化」、「情報提供の方法」、「情報発信のタイミング」が重要。
③損害保険
新潟地震を契機に政府と保険会社が共同して地震保険が誕生したが、補償内容や加入限度額は制限されつつも大地震発生ごとに改善されてきた。
保険対象 建物。住居、併用住宅のみ。工場、事務所は対象外。
家財 30万円を超える貴金属、有価証券、預貯金証書は対象外。
対象となる損害 地震(焼失、倒壊、埋没)、噴火、津波
対象外の損害 紛失、盗難、災害発生日から10日経過後に生じた損害、法令違反、戦争・内乱
加入条件火災保険とセットで加入すること。(地震火災では火災保険だけでは延焼保障されない)
契約金額 建物は5000万円、家財は1000万円を上限とする。
共済制度 JA共済(地域区分なく全国一律)、全労災保険証券を消失ても保険会社に原簿があるので本人確認ができれば保険請求できる。