今回は国外宣教委員会の「宣教学研究会」で取り上げた書籍『福音の再発見』(キリスト新聞社、2020 年)をご紹介いたします。
本書の帯には「なぜ、多くの若いキリスト者が、今日、教会を去ってしまうのか?」という印象的な言葉があります。著者は自身の経験を踏まえて、私たちが伝えるべき「福音」が矮小化されているのがその原因ではないか、と問題を提起します。そしてそこから自分たちが今まで「福音」だと思っていたものをもう一度見直してみよう、と語り始めます。
本書の著者であるスコット・マクナイトは、私たちと同じ“ 福音派” の立場で語っています。著者が感じている問題は、「福音」が「天国に手っ取り早く行く方法」としてのみ語られている、ということでした。使徒たちはもっと深くて広い「福音」を語っていたはずですが、長い教会の歴史の中で語り方がどのように変容していったのかということを、著者は丁寧に語っていきます。そして最終的に、今日私たちが語るべき「福音」の概要を提示します。
研究会では、この本を読んで分かち合いをしました。その中では、著者の聖書解釈や教会史の理解に対して「疑問が残る」、「より深い考察が必要」といった意見も挙げられました。しかし著者が感じている「福音」理解の問題と、聖書から「福音」の意味を再確認しようとする姿勢には、ほとんどの参加者が共感していました。また宣教師たちからは、宣教地では信仰の決心を促すところに働きが偏りがちであるかもしれない、という自己批判的な意見も寄せられました。
私自身は本書の内容とともに、他の参加者の方々の疑問や問題提起によって考えさせられることが多くありました。1 人で本書を読んでも有益ですが、研究会で分かち合うことによってより深い学びが与えられていると感じています。
「兄弟たち。私があなたがたに宣べ伝えた福音を、改めて知らせます。あなたがたはその福音を受け入れ、その福音によって立っているのです。」(Ⅰコリント15 章1 節)