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社会厚生部 認知症と教会Vol.1

社会厚生部
認知症と教会Vol.1
東京基督教大学准教授 井上貴詞(土浦めぐみ教会 教会員)

2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人にあたる700万人の方が認知症になると予測されています。その予備軍である軽度認知障害も入れると5人に2人、まさに日本は認知症大国です。世の中の平均よりもさらに高齢化している日本の教会は、その上をいく割合になることも想定されます。
認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会をめざすために、行政、民間セクター、地域住民など様々な主体がそれぞれの役割を果たして協働していくことが求められています。そうした中で、教会はどのようにあったら良いでしょうか。牧師や信徒が認知症になった時に個人として、教会としてどんな備えが必要でしょうか。また、教会の宣教の使命、社会との関係という面ではどんな課題があるでしょうか。これらを説明しつくす事はできませんが、福祉と教育の現場で考えてきたものを少しずつお分かちしますのでご一緒に考えていただければ幸いです。
認知症になると、大きな不安と葛藤、悲しみと喪失感、孤立感、無力感、疎外感を覚え、自分という存在が徐々にこの世界から消えていくという恐怖に直面します。周囲の家族も困惑し、パニックになったり、共倒れになることも引き起こされます。しかし、それは認知症になると何もできなくなるということではありません。認知症の進行を遅らせ、認知症になってもその人らしく社会の中で生きることはできるのです。認知症になった人を絶望の淵に追いやるのは、むしろ周囲の無知、無関心、偏見であると言ってよいでしょう。
認知症の人の課題には、「スピリチュアルな自己」にどう向き合うのかという究極な問いがあります。実は、ここにこそ教会が果たせる役割があるのですが、それは追々と述べていくとして、今回は認知症を引き起こす三大疾患について簡単に述べてみます。
認知症とは、一般的に脳の細胞が損傷したり、脳の司令塔の働きに不都合が起きて、いったん正常に発達した認知機能が持続的に低下して社会生活に支障をきたすようになった状態です。原因疾患として最も知られているアルツハイマー型認知症は、全体の約50%(別データでは67.6%)を占め、早い段階から記憶障害・見当識障害(時間や場所がわからなくなる)、不安・うつ・妄想も出やすくなります。血管性認知症は、脳梗塞・脳出血などが原因で、意欲の低下や複雑な作業ができないなどの状態が出現します。過去においては高い割合を占めていましたが、現在は治療や予防が進み、全体の15%(別データでは19.5%)くらいです。レビー小体型認知症は、日本人の研究者が発見したもので全体の15%(別では4.3%)を占めます。筋固縮や小刻み歩行などパーキンソン症状が出現し、幻視や睡眠行動障害が見られます。他に発症割合は1%程度ですが最も介護の困難な前頭側頭型認知症や治療が可能な正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などがあります。

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