日本とアジアと世界に仕える Japan Alliance Christ Church
日本同盟基督教団 教団事務所 

多くの論争があった後に 常任書記 藤田敦

多くの論争があった後に
常任書記 藤田敦(北総大地キリスト教会牧師)

「それで、パウロやバルナバと彼らの間に激しい対立と論争が生じたので、パウロとバルナバ、そのほかの何人かが、この問題について使徒たちや長老たちと話し合うために、エルサレムに上ることになった」(使徒15章2節)

「そこで使徒たちと長老たちは、この問題について協議するために集まった。多くの論争があった後、ペテロが立って彼らに言った」(使徒15章6〜7a節)
「教会の課題はいつもグレー(灰色)。可否は分かれて当然。それでも、みこころを探り祈りつつ決断する」。これは私が教会の会議で繰り返すことばです。パウロの時代も同じ。課題がグレーだからこそ人々は可と否に分かれ、激しい対立と論争が生じました。
さて、去る2月の臨時総会でCOVID‐19特例規程が可決成立。「C O VID‐19の影響によるやむを得ない事情」を議長が認めた場合、教団総会にウェブ経由で参加できる規程です。投票92 票中「可92票・否0票」での可決でした。本来、自由な会議での表決はグレーを反映し可否が分かれて当然。独裁国家はいざ知らず、およそ「100%の是」は起きないものです。しかし今回は「真っ白」、それが起きたのです。
私自身は教憲教規委員長として原案作成に関わり、常任書記として総会議長と共に総会審議に努め、かつ議員としては可を投じた1人です。しかし一方、心の中で危うさを覚えました。「ウェブ経由での総会参加に疑義を覚えて否とする人が1人もいない。自分も含めて教団全体が1つの感性『ネットは当然』に流されてはいないか」と。振り返れば昨春以来、危機感を覚える情報や言葉が大量に流れました。ロックダウン、東京アラート、緊急事態宣言。諸教会は雪崩を打ったように礼拝のネット配信へ。教団の会議もほぼネット経由。その流れの中、臨時総会の表決にも無意識の力が働いて100%の是が起きたのかもしれません。
ちなみに私の仕える教会ではこの1年、集まる礼拝を維持し続け、インターネット配信をしませんでした。広い駐車場のあることも幸いし、昨年5月から夏秋冬とすでに10か月間、野外で礼拝をしています。そのせいでしょうか、他教会から「ネット礼拝が果たして正しいのだろうか」「感染予防に力を注ぎ集まる礼拝を維持すべきだと思うのだが」との相談も受けました。教会がみことばと聖餐の下に集まることは、苦難や迫害、災害や疫病に遭っても守ってきたものです。そこへ突然起きたCOVID‐19、何としても避けたい感染。その横には、だれもが画像と音声を交わせるネット技術の存在。緊急にどう対応するかは各教会の置かれた状況が異なる中、それぞれが決断するほかないでしょう。しかし、教会史2千年の中で初めて問われる「礼拝や教会会議にそれら技術を介在させてよいかどうか」という神学的にもグレーな課題は、引き続き慎重に議論されるべきものでしょう。
COVID‐19特例規程の制定を受け、総会議長は総務部と共に定期総会の準備をしています。そして改めて、「特例規程は総会会議場に議員が参集し出席することを本旨としています」「総会会議場に参集し出席いただきますように」と呼びかけました。一方、重症化しやすい持病のある人、やむを得ない事情を抱えた人、それら議員が今回は特例規程に基づいてウェブ経由で参加する。それも積極的な総会出席です。どちらの形態であれ、私たちはもう一度心に留めたいと思います。教会は会議に集まって、事実の報告を聞き(15章4・12節)、意見を交わし(7〜11節)、みことばの裏付けを探り(15〜18節)、判断してきた(19〜21節)。その真剣な論争に学びましょう。そして「聖霊と私たちは…決めました」(28節)、と言えるまでに確信に満ちた決断。そのような第72回教団総会となることを願います。

Print Friendly, PDF & Email