日本とアジアと世界に仕える Japan Alliance Christ Church
日本同盟基督教団 教団事務所 

主のあわれみに生きる 出版局局長 山口陽一

主のあわれみに生きる
出版局局長 山口陽一(派遣教師)

「主よ。顔をおおう恥は私たちにあり、私たちの王たち、首長たち、および先祖たちにあります。私たちはあなたに対して罪を犯してきました。」(ダニエル書9章8節)

日本同盟基督教団は、アジア太平洋戦争期の歴史をふまえ、教憲前文に「過去の戦争協力と偶像礼拝の罪を悔い改め」と明記しています。日本人310万人が無残に死んだ戦争で、アジア全域で殺した人は2000万人にのぼるとされます。日本基督教団は教団規則第七条に「皇国ノ道ニ従ヒテ信仰ニ徹シ各其ノ分ヲ尽シテ皇運ヲ扶翼シ」と記し、統理者は伊勢神宮に参拝しました。「戦時布教指針」には「聖戦目的ヲ完遂」、「天業ヲ翼賛シ国家非常時局ヲ克服センガ為ニ天父ノ召命ヲ蒙(コウム)リ」と謳(うた)われました。日本同盟基督協会も1941年から1948年までこの日本基督教団の一員でした。教会は神と隣人に罪を犯し、一方で信教の自由を奪われ迫害されたのです。加害者でありながら被害者でもあった教会の罪責告白は、1996年の「横浜宣言」、2007年の教憲前文の改訂に結実しました。これは戦後50年の1995年に日本の植民地支配と侵略を謝罪した村山談話と重なる動きでした。
ところが、この頃から第二次世界大戦の戦争責任・戦争犯罪に関わる「歴史修正主義」の声が大きくなります。欧米ではユダヤ人へのジェノサイド、日本では南京大虐殺や従軍慰安婦の否認や矮小化の主張です。歴史学が歴史の見方を修正するのは当然です。しかし、歴史修正主義は否定のための論であり、証拠を隠すものである戦争犯罪の証拠を示せと言い、証拠を示せば捏造(ねつぞう)だ、捏造でない証拠を示せと言う。そして、その主張は被害者へのヘイトスピーチに繋がり、陰謀論を持ち出すなどの一連の傾向があります。戦争においても美談はあります。しかし、顕彰だけでは真実の歴史には到達できません。アメリカを批判させない歴史修正主義も、反日を煽(あお)るための歴史修正主義も、同じく警戒すべきです。
聖書的にはどうでしょうか。神の民は神の前に歴史を振り返る時、自らの過ちと神のあわれみを告白しました。自国や民族を誇り顕彰するのみならず、神のあわれみの中で罪を悔い改めたのです。日本にも日本の教会にも恥ずべき歴史があります。歴史に目を閉ざすことなくこれを認め、神のあわれみの中で悔い改めて生きることで和解が始まるのです。人も国も過ちを犯します。過ちを犯しながらそれを認めない国を、誰が誇りとできるでしょうか。
かつて、日本の教会は、国体に反しては伝道ができないと思い込み、キリスト教の日本化をめざし、戦時下には天皇を神と並べて崇める「日本的キリスト教」に行き着きました。神への礼拝を天皇や神社に分与し、神のみを神とすることができなかったのです。戦後の福音派の聖書信仰は、聖書に対する自由主義とともに日本的キリスト教からの脱却をめざしました。ここには負の遺産を教会の成熟に活かす努力がありました。日本同盟基督教団は130年の歴史を心に刻み、戦争の罪責を担う教会として和解の福音に生きたいと思います。
「あわれみと赦しは、私たちの神、主にあります。」(ダニエル書9章9節)

 

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